| 「イリュージョン マジシャン第II幕」 (松岡圭祐著 小学館 \1600) | |
生活能力皆無で夢見がち、にもかかわらずプライドは高い父と、そんな夫に尽くし生活を支え、よき妻よき母を演じつつもストレスを溜め込んでいた母親と3人暮らしの中学生・彬。成績は悪く、友達もいない屈折した彬の心の拠り所はマジック。もうこの「趣味はマジック」ということ自体が微妙なのだが、その微妙さ加減を著者は良くわかっていて、「万引きGメン」との絡め方も巧く、普通に楽しかった。そうそう、シリーズ前作の「マジシャン」も面白かったんだよねぇ。でもどうも、松岡圭祐には未だそこはかとなく「微妙感」が漂っていて敬遠されがちな気が。ぜひお試しを。 | |
<いやほんとに、微妙じゃないっすか松岡圭祐。いつまでたっても深夜番組にアヤシイ催眠術師として出ていた頃の印象が強くて。でもでもでも、これと前作の「マジシャン」(小学館¥657)はほんとお薦めです。ま、タイトルもタイトルなんで、騙されたと思って一度読んでみて下さい。損はしないっすよ> | |
| <この本を買ってみようかな> | |
| 「トカジャクソン」 (戸梶圭太著 光文社 \1600) | |
いったいぜんたい、今年は何作新刊が出るんだ? 毎月新刊レビューを書いてる気がするんだけど気のせいだろうか。とにもかくにもこれは3冊目の短編集。私は戸梶圭太の短篇集が結構好きだ。長編は正直な話、のれるときと振り落とされるときがあるのだけれど、短篇集は振り落とされても、蹴られても、挑み続けられるので嬉しい。それにしても、巻頭の「涙のベストセラー」。すんごい笑えるのだけれど、笑ってる場合なのか、笑ってていいのか、まぁいいか。合言葉は「ニャっほう!」ってことで。え?合言葉?いったい何の? | |
<凄いんだ、この「涙のベストセラー」。弱小出版社の社長が何がなんでもベストセラーを出せ! と命じてあの手この手をうつんだけど、「涙もので行け!」と言ったすぐ後に出てくる社員の名前が乙武。もうそれだけで笑うっちゅーねん> | |
| <この本を買ってみようかな> | |
| 「天窓のある家」 (篠田節子著 実業之日本社 \1700) | |
女の嫉妬、欲望、願望、希望をテーマに描いた9つの物語。初出が96年から02年とわりと古いのだけれど、いやぁ唸りまくり。こういう「女」の話は、篠田節子はほんと巧いと思う。普通によくいるのだろうけれど「うわっ、いやなヤツ......」と言いたくなるような夫の言動とか、仕事と家庭を必至で両立させようとしている女の思考とか、細部がちゃんと共感できるエピソードで固められているので、いちいちいちいち「くぅ」と思ってなかなか先に進めなかった。個人的には「パラサイト」と「密会」あと「友と豆腐とベーゼンドルファー」が好き。似非男の友情に「ケッ!」と思った経験のある人は「友と豆腐〜」をぜひ。 | |
<「友と豆腐〜」の夫は元・大手商社の人事課長で、リストラで首を切りまくった責任をとって自分も会社を辞め、障害者の福祉作業場職員として再就職。商社時代に比べてすこぶる人間的な仕事に就いた夫の給料はしかし、ボランティアに毛の生えたようなもので、妻である主人公は生活費を稼ぐため、身を粉にして働いていた。イヤなことがあっても辞めるわけにはいかず、家事と仕事にひとり追われていたわけだ。そんなところに、夫が「100万円ほど都合してくれ」と言い出す。聞けば会社員時代の同期に、子供が腎臓病で、保険のきかない治療を受けたいから、と頼まれたと言う。その同期は夫がリストラしたという背景もあった。やりきれないやりとりの後、結局一度は夫の言葉に従う主人公。けれど銀行から金を下ろしたその帰り、たまたま入った高級スーパーで偶然その子供の母親に会う。置いてある品物のあまりの値段に驚き、1丁118円の豆腐を買おうとしていた主人公は、子供の母親が持っていたカゴに無造作に450円の豆腐が入れられているのを瞬時に見つけて――という話。35歳以上の女子必読、いや本当は男の人にこそ読んで欲しいかも> | |
| <この本を買ってみようかな> | |
| 「愛とからだとこころとしっぽ 愛とセックスできれいになる108の方法」 (寺門琢己著幻冬舎\1300) | |
常々思っているのだけれど、私には「綺麗になりたい」という欲求が決定的に欠けている気がする。いまいちダイエットに本気になりきれないのも、「痩せたところで、だからどうなのよ?」という気持ちがあるからに違いない。でもって、これまたよく言っていることだけど、自分でも「どうなのよ?」と思うほど性欲もない。だから「愛とセックスで綺麗になる」なんて言われても、なんっつーか欠片も食いつく部分がないのだ。しかし、これが「身体」の本として読むと、ものすごーくためになる。メ口に水を含んでの腰湯モや骨盤の歪み修正のメニュートラル体操モは早速実行。あと、私がこれまで付き合ってきた相手は、ほとんどが痩せ型で、みんな私より体重が少なかったのだけれど、その理由も書いてあった。いやぁそんなことに理由があったなんて! ただの趣味だと思ってたですよ。 | |
<実のところ、私はもう一生セックスなんかしなくてもいいかも、というぐらいもう性欲がない。でもこの本、売れてるみたいですね。昨日行った本屋でも週刊売上1位だったし> | |
| <この本を買ってみようかな> | |
| 「枯葉色グッドバイ」 (樋口有介著 文藝春秋 \2000) | |
樋口有介といえばサンミスの「ぼくと、ぼくらの夏」で、それ以外にほとんど読んだ記憶がなかった。で、この本も、タイトルから何て言うか「オヤジ・ロマン」の気配が濃く、あまり乗り気でもなく読み始めたのだけれど__いやいやカンは外れました。すみません、面白かったです。一家殺人事件で一人生き残った女子高校生がいて、数ヶ月後、その友人が代々木公園で殺された。一家殺人事件を追っていた女刑事は、代々木公園のホームレスの中に、かつて自分が指導を受けた名刑事の姿を発見。個人的に捜査の協力をあおぎ、男は渋々ながらもメホームレス・ホームズモとして事件の真相究明に乗り出す、という大筋。こう書くと、ワケありで影のある生き残り女子高生、ひたむきで一生懸命な女刑事、人情味と正義感溢れるホームレスの元刑事、というキャラが思い浮かぶかもしれないけれど、全然そんなヤツらではない(笑)。女刑事なんか、すんごい自分勝手だし、読んでいて「うわっ、この小生意気な女、どうしてくれよう......!」と歯軋りさえしかねないのだけれど、そこが面白い。ミステリーのネタ云々よりも登場人物に強く惹かれた。いいコンビなので、シリーズ化して欲しい。ガタイのいい女刑事=瀬戸浅香、ホームレス刑事=椎名桔平あたりでドラマの原作にもいいと思うんだけどなぁ。 | |
<追記すると、ホームレス仲間や生き残り女子高生の親戚なんかの脇役もいい味。個人的には今年の見っけモノかも> | |
| <この本を買ってみようかな> | |
| 「定本「一人ごっつ」」 (松本人志著 ロッキング・オン \1200) | |
伝説の深夜番組「一人ごっつ」の誌上バージョン。「ギャグを読む」って、やっぱり結構難しいな、と思う。なんで難しいのか考えたら、テンポを自分で調整しなくてはいけないからじゃないかと。笑いでリズムってほんと大事だ。それはともかく、当時の番組を回想するインタビューが興味深かった。あと「コントは嫌い、自分の本分だからこそ辛いしいつも逃げ出したい」と言っていて、あぁなるほど......と。ちょっとしみじみ。 | |
| <この本を買ってみようかな> | |
| 「すっぱだかで反省文。」 (光浦靖子著 河出書房新社 \1200) | |
「ちょっとモノカキみたいなことしてみました」系のタレント本と見せかけて、明らかに違う覚悟のあるエッセイ。以前にも彼女のエッセイを読んだことがあるのだけれど、この人、多分、ちゃんと本が書ける人だと思った。で、その本が出てインタビューさせて頂いたときに「小説を書いてみたいと思う気持ちは?」と聞いてみた。そうしたら「それはちょっと......怖いですね」と。そこで「書きたいです!直木賞目指します!」と言わない(言えない)のが光浦靖子の賢いところなんだよな、と本書を読んで思い出した次第。でも多分そこが「今ひとつはじけきれない」理由でもあるのかも。いや、書かないかなぁ小説。読んでみたいけど。 | |
<その光浦靖子の前作は「み・つ・う・ら」(光文社¥1200)。なんかこう、光浦靖子をいい、と言うことが既に半周回ってすかしてる風に取られがちな気もするが、悪くないのよほんとに。> | |
| <この本を買ってみようかな> | |
| 「山ん中の獅見朋成雄」 (舞城王太郎著 講談社 \1500) | |
父も、祖父も、代々背中から腰にかけて鬣のような毛を生やしていた獅見朋家。幼い頃から覚悟はしていたものの、気付けば自分だけ、胸の上にもその気配が。足が速く、オリンピック強化選手の合宿にまで参加をすすめられた成雄はしかし、自分の鬣がオモシロ半分に話題にされることをおそれ、相撲好きの書作家・モヒ寛と共に、彼の住む山にこもった__。ジャンルとしては純文になるのだけれど、「阿修羅ガール」や「熊の場所」ほどかっ飛ばしてはいない。「九十九十九」で脱落した人にとっても最後まで読破できるはず。個人的には、奈津川家シリーズ以外では、これまでの著作の中で一番好きかも。しかしヒトボン、凄いぞヒトボン。 | |
<そうなんだよ、ヒトボン。いや人の身体の上に食べ物をのせるんだけどね。だから人盆。ま当然想像される女体盛り。しかもその上に盛られている肉は……あと、舞城節っていうよりも、舞城リズムが今回も心地良し> | |
| <この本を買ってみようかな> | |
| 「真夜中のマーチ」 (奥田英朗著 集英社 \1500) | |
ふとしたことから知り合ったパーティ屋・ヨコケンと、一流商社勤務のミタゾウ、傲慢で高飛車な元モデルのクロチェ。25歳の3人がくわだてたのは、ヤクザの賭場に集まる男たちが持ち寄った10億円強奪! 誰も傷つけず、スマートに、ちゃっかり頂戴するはずだった。が、しかし! そう簡単に大金が手に入るはずなんてなく、3人は、ヤクザと謎の中国人を追いつ追われつ東京中を走り回る。このドタバタでジタバタな感じ、久しぶり! そうそう、今回の「犬」はドーベルマン。でも名前は可愛らしいストロベリー。ラブリーなり。 | |
<充分面白いんだけど、もう奥田英朗に対しては期待値高くなっちゃっているので、そういう意味ではやや弱いかも。そういう意味で奥田英朗はもう「人気作家」なんだな、とつくづく思う> | |
| <この本を買ってみようかな> | |
| 「東京大学応援部物語」 (最相葉月著 集英社 \1500) | |
ほんと、不思議だったんですよ。私も。あの応援部(団でも可)という存在。自分で競技をやるわけでもなく、他人の応援って。しかものほほんと「観戦」してるわけじゃない。応援部は試合を観ちゃいけないらしい。一体何が楽しくて、何のために「応援」してるのか。しかも日本の最高学府・東京大学に入ってまで、他人の応援に青春を捧げる謎。そんな価値あんの? と思って読んだ。驚いた。想像していた以上に応援部は体育会系で、厳しく、男で、ますます「なんでそこまでして」な世界だった。果たして彼らはなぜ「そこまでする」のか。正直読み終えたもよくわからないのだけれど、ちょっと彼らを見に行きたくなった。春になったら神宮へ行こうかな、と。いやほんとに。 | |
<ついこの間、テレ朝系列の「ZONE」でも取り上げられていた東京大学応援部の“リーダー”たち。彼ら、この21世紀に登校時も学ラン着用なんですよ。凄いよなー。とにもかくにも読後感としては「オレも頑張ろう……地道に」と思えるはず> | |
| <この本を買ってみようかな> | |