だらしな書店




オススメ!「ZOKU」
(森博嗣著 光文社¥1500)
日本有数のトップ企業オーナーである二人が、まったくの趣味で設立した“悪戯”組織「ZOKU」と、彼らの行動を阻止することを目的にした「TAI」。文字通り人々を震わせる“暴振族”、映画や芝居の上映中、突然笑い声を発生させ人々を困惑させる“暴笑族”、スプレイやクレヨンの色を表示されているものと別の色にしてしまう“暴色族”など世の中に悪戯を仕掛けていく「ZOKU」と、地球防衛軍さながらに悪に立ち向かう「TAI」のバトルはヤッターマンシリーズさながら。素敵にくっだらなくて肩の力抜けまくり。でも仕掛けられていることはやっぱり深いというため息。ふぅー。
<これを読んで「いやぁやっぱ面白いわぁ」と思えれば森ファン決定、というある種リトマス試験紙のようなユーモア小説。いやユーモアって何さ?って話なんだけど>
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「とるにたらないもの」
(江國香織著 集英社¥1200)
身の回りにある「とるにたらないもの」をについて800字前後で思いを綴ったエッセイ集。輪ゴム、煙草、焼き鳥、お風呂、ケーキに石けん、子守唄に推理小説。このテのエッセイは思い入れの匙加減が難しいと思うのだけれど、文章はあっさりなのに、とろーんとした余韻が残ってたまらない。私は江國香織フリークとは言えないので、もの凄く沢山の発見があって楽しかったのだけれど、フリークの人からするとこれは意外なのか、そうでもないのかが知りたいかも。「いいのだ、ということ」は思わずうんうん頷いてしまった。「固ゆで玉子」の文章も好きだ。
<こういう短いエッセイって、読むほうはめちゃくちゃ気楽かつ気軽だけど、書くのは難しい。切りとるところを間違えると物足りないか濃すぎて鬱陶しくなりがちで。その点、江國香織は流石に巧い。そもそも「身の回りのとるにたらないもの」の話なんて、その著者に興味がなければ「で?」みたいなもんじゃないですか。正直、私は特別江國さんファンというわけでもなかったので、かなーり「ふ〜ん?」的に読み始めたんだけど、ちゃんとページを捲らせてしまうのだ。これってほんと凄いことなんです>
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「何を根拠に」
(ナンシー関著 世界文化社¥1200)
まだ出るか! という印象もなきにしもあらずだけれど、さすがに「掘り出した」感のあるかなり初期に書いていた映画評&メディア評コラム集。「年平均映画鑑賞本数6本」で映画評を引き受けるのも凄いが、その映画評ページが突然「岡村靖幸」評になってしまうのはもっと凄い。いやぁ岡村靖幸、懐かしいなぁ。ほかにも「ウンナンVSダウンタウン」とか「ゆうゆ」とか「淡谷先生の隣の生田悦子」とか懐かしいフレーズ(じゃないだろう)が満載で、読んでいるといろんな意味で「あぁ時は過ぎてゆくのね」と感じる。素敵。
<読み終えて一番印象的だったのは「川合俊一生き残ってるなぁ」ということ。クイズ番組が素人参加から芸能人参加に変わってきたのは、「新曲を出せない歌手」や「映画に出ない俳優」や「笑いのとれないお笑い芸人」にとって有り難い職場になっている、というエッセイがあり、そこに「ゆうゆ」や「チェッカーズの高杢」や「吉村明宏」なんかの名前がある。推定12年ほど前の原稿。そこに「バレーの川合」の名前もあるんだけど、12年経って今尚そのまま生き残っているという事実が結構衝撃。っていうか12年間、そのままのキャラでも生き残れて来れたっていうのが凄いなと。さすが「どうなってるの?」ですなぁ>
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「東京湾景」
(吉田修一著 新潮社¥1400)
出会い系サイトで知り合った品川の倉庫で働く亮介と、お台場の高層ビルで働く涼子。心のどこかでお互い惹かれながらも、「出会い系」で出会ったこと、それぞれの過去の恋、今の自分の仕事や立場、あらゆること引っかかり、信じたいのに信じられない不器用な二人の恋。「不器用な恋」という言葉はよく使われがちだけれど、よくよく読んでみると「でもこれって不器用っていうより言葉足らずのバカなんでは?」と思うこともありがちで、けどこの二人は本当に「不器用」でしみじみよかった。これまでのところ私的には吉田修一のベストかな、と。
<「きっかけは出会い系サイト」というだけで、そこはかとなく「今さら」感が漂うんだけど、それが不思議と良かった。そもそもこの品川の倉庫、という場所の選択が上手いと思う。都心なのに華やかさはなく、漂う取り残された感がたまらん>
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「爆笑問題の「文学のススメ」」
(爆笑問題著 新潮社¥1300)
花村萬月、平野啓一郎、松尾スズキ、江川達也ら9人の作家に鋭く斬り込む怖いもの知らずの対談集。日テレ系列「爆笑問題のススメ」を単行本化。いわゆる同業者ではなく、しかも相手は爆笑問題なので、作家の思わぬ発言が読めて楽しい。その発言がサービスなのか、本音なのか、営業なのかを勝手に想像するのもまた楽しい。
<本はまぁ楽しいんだけど、最近爆笑問題なんかううむ、って感じがするんですが。田中の突っ込みは変わらないんだけど、太田のボケが年齢と共に辛くなってきたっていうか、いつまでそんな若手みたいなボケやってんの?という印象を受けてしょうがない。って別にどうでもいいんだけど>
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「指輪をはめたい」
(伊藤たかみ著 文藝春秋¥1238)
ある日僕=片山輝彦はスケートリンクの診察室で目を覚ました。どうやらリンクで転んで頭をうったらしい。でもどうして一人でスケートなんて? 大事には至らなかったものの、転んだ少し前からの記憶だけがどうしても思い出せない。午前中に指輪を買ったことは覚えているのだ。僕はその指輪を渡してプロポーズするつもりだった。それは覚えている。でも誰に? 誰に渡すはずだった? 3人の彼女に次々会ってどうにか思い出そうとしてみるものの、どうしても思い出せない! という30歳目前にした男子を主人公にした恋愛小説。3股なんて凄い、と思うのだけれど、その付き合い方が絶倫!という感じではなくさもありなん、という印象で興味深かった。意外とこういう飄々とした男が何股もかけられるのよねぇ、と妙に感心。でもこのラストはどうなのか。ううんどうなんだろう。
<えええっ!? と思ったのが、主人公は編プロの編集者で、最初ゲーム雑誌の部署にいるんだけど、そこで週末缶詰状態で泊り込みさせられ原稿書いてるライターが、徹夜明けにトイレでオナニーしている場面があって、それが個室ではなく所謂小用の便器に向かってなんだよー! それを主人公は「珍しいことでもない。(中略)どうして個室に入ってやらないのかは上手く説明できない。それでも確かに、徹夜が続くと小の便器に引っ掛けたくなるのは、経験からして事実なのであった」って語る。男子トイレも男子の本能も知らない私にはえーっっっっ!!!てなもんだ。この本で一番印象的な場面でございました>
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「ネロが消えた」
(高山文彦著 唐仁原教久 絵 飛鳥新社¥1700)
ネロが消えた。ちょっとリビングの窓を開けていた間に、そこから出て行ってしまった――。ノンフィクションライターとして知られる著者の処女小説。子供のいない夫婦が、行方不明になってしまった飼犬ネロを探す5日間を描く。どうってことのない話で、どうってことない結末なんだけれど、とても他人事とは思えず胸が苦しくなった。「ネロ、ネロ」と名前を呼びながら探し回る主人公が、「死んだとはっきりわかっているほうが、どれだけ気持ちが楽だろうか」と思う気持ち。涙腺ゆるみそうでヤバかったっす。
<犬を飼ってる身としてはたまらないものがあったし、犬好きな人にはぜひ薦めたいんだけど、この「子供ができず子供替わりに犬を飼っている主人公夫婦」がちょっと微妙。子供の変わりに犬を溺愛している方向にややブレ気味で、「ネロ君は犬じゃないんです。ネロ君はネロ君なんです。ネロ君が糞詰まりになったら、私が浣腸してあげるんです。それでも出きれないで残ったのは、私がお口で吸い出してやるんです」なんて言う妻が特に。いや可愛いのは解るしホント家族並に大事だとも思うけど。ちょっとこの妻のキャラクターが受け入れきれない私>
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「駐在巡査」
(佐竹一彦著 角川書店¥1600)
人口600人、四方を山に囲まれた交通の便極悪の山谷村駐在所に赴任した猪熊喜三郎。過去、交通人身事故はもちろん、事件と名のつくものは一切起きていない平和な村で、男女の死体が発見された。殺人及び死体遺棄事件。空前の大事件を前に「駐在さん」の猪熊は、独自の捜査を進める――。正直、装丁といいタイトルといいオジ系小説だと思っていたのだけれど、なかなか面白かった。いやでも、もちろん今でもこういう村は沢山あるんだろうと理屈ではわかっていても、読んでいるともの凄く遠い世界の話に感じる。いや松阪の祖母の住んでる町も同じような感じなんだけど。
<テレビドラマ化決定、らしいが詳細わからず。ドラマの原作って、アレンジしない方がいいモノと、本当に「原作」で素材としていいものがあるけど、これは後者だと思う。このままドラマになったらいくらなんでも地味過ぎな予感>
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オススメ!「ツ、イ、ラ、ク」
(姫野カオルコ著 角川書店¥1800)
「ヒトが集まるところ、常にグループができる。身長で。成績で。住所で。性別で。群れなすヒトの社交によってグループ分けされたものがサロンである。別名、村。サロンは小学校から会社まで五大都市から長命市まで、学生から役人からサラリーマンから自由業者まで、変わりはない。社会というサロンがあり、その中に学校というサロンがあり、その中にクラスというサロンがある」――。人口4万人、長命市の小学校から中学へと続くサロンに集う子供たちを描きつつ、その中で一人の少女が“落ちた”恋。姫野カオルコ久々の恋愛長編作なのだけれど、良かったなぁ。子供の恋愛“なんて”と思うなかれ。今回のイチオシ。
<いかにも女!いかにも女子!な恋愛小説は苦手な私。これは決して恋愛体質ではない主人公の恋、というのがツボなのかも。序盤、登場人物を把握するまでは、やや辛いけど、人物相関図が頭に入ってからはグイグイいく。何か面白い本ないかなぁと思っている20代、30代の女性にぜひお薦めしたい>
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「強奪箱根駅伝」
(安東能明著 新潮社¥1900)
12月30日。神奈川大学陸上部駅伝部員の津留康介は、4年目にして初めて正月の箱根駅伝メンバーに選出された。しかしその夜、陸上部マネージャー水野友里が姿を消す。合宿所に届けられた1枚のFAXには、友里を帰して欲しければ都留康介の出走を取りやめろ、と書かれていた。時を同じくして箱根駅伝のテレビ中継チーフプロデューサー幸田の元に、友里を襲う男の姿を映した映像が届けれれる。そして1月2日。箱根駅伝の幕が開く。犯人は? そしてその狙いは? 選手としては無名の康介をターゲットにしたのは何故なのか――。面白かった! といっても、誘拐事件とその背景よりも、「駅伝を走る」という青春小説として。お薦め!
<いやもう毎年、つくづく思っていたわけですよ。正月早々から何が楽しくて箱根なんか走るのかと。寒いし辛いし意味ないじゃんと。ロマンスカーならなら90分なのに!と。しかもすんごい努力して苦しい辛い思いして走っても、野球やサッカーと違ってプロなんてものにはほとんどなれないわけで。ホントにまったく「♪なのに〜な〜ぜ〜」走るのかと、そんなにしてまで。それがまぁどうしたことでしょう。来年はぜひとも駅伝見なくちゃだわ! と思ったですよ。年末年始の暇つぶし本としてはかなりいい線じゃないでしょうか>
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「がんから始まる」
(岸本葉子著 晶文社¥1600)
東大卒「やや美人」のエッセイストである著者。40歳のある日、がんの告知を受ける。「虫垂がん。S状結腸浸潤」。自由業の独身一人暮らし。マンションのローンあり。仕事はどうする? 病院は? 親にはどこまで話せばいい? 入院、手術の結果主治医に告げられた「手術による治癒率は30%」という数字の重み――。と書いているとヘビー級に重いが、それらすべてを引き受け、乗り越えて行く過程が、不安に溺れることなく綴られている。自分だったらとてもこんなふうにはいられないだろうな、と思うとその覚悟と決意に頭が下がる。例え強がりだとしても、こんな風に強がることができるのは凄い。しかし癌って、見つからないときは見つからないんだなぁ。
<ぶっちゃけ(死後)あまり好きじゃなかったんですよ、岸本葉子。小説家ではなくエッセイストなので好き嫌いで語るしかないんだけど、そういう意味ではほとんど共感できるところもないし、周到に張り巡らされた優等生ならではの媚び臭のようなモノも感じて。と言いながらもかなりの著書を読んでいるんだけど、でも大概は読まなかったことにしてきたぐらい。でもねぇ、これはちょっと凄いな、と思った。癌だから云々ということではなく、自分を俯瞰で見て書くその匙加減が絶妙だし、「癌を書く」と決めてからの姿勢が凛としていて凄いなと。同情からではなくね>
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「人生激場」
(三浦しをん著 新潮社¥1400)
週刊新潮に連載していたエッセイをまとめたもの。連載中もちょこちょこ読んでいたけれど、まとめて読むとやっぱりオモシロさ倍増。宇多田ヒカルの「光」のプロモビデオ(本人がキッチンで皿を洗ってる)はやっぱりみんな「ちゃんと裏もよく洗え!」と思うんだねぇ。彼女のエッセイが楽しめるか否かは、特有の妄想世界に入っていけるかどうかが勝負な気がする。
<私はどちらかといえば三浦しをんはエッセイより小説好きだ。妄想入ってるのも小説だと気にならないがエッセイだとたまについて行ききれず、置いてきぼりにされたようで寂しい。しかしこれは連載していた週刊新潮っていう媒体が女性誌なんかと違っていい意味でオヤジ寄りだっただけに、むしろ書きやすい部分もあったんでは? お気楽極楽モードのときに>
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