だらしな書店




オススメ!「劇情コモンセンス」
(前川麻子著 文藝春秋\1429)
そこそこ知られた、けれど小劇場界からは当分脱出できそうにもない劇団「木村座」が舞台。1つの芝居の準備から打ち上げまでを追いつつ、劇団員たちの苦悩と葛藤、芝居への愛と情熱を描く。ちょっと読み忘れていた10月の新刊。前川麻子は個人的に注目作家。
<昔、レコード会社や音楽制作会社で働いていた私。制作やマネージャーをやっていたわけではないのだけれど、そのとき、そうした職種の人に対して「人の人生左右する仕事って怖いな」と思ってた。だって、ライブハウスでスカウトしてきたようなお兄ちゃんたちを、デビューさせたりするわけですよ。で、その人たちの運命ってのは、もちろん実力云々もあるけれど、所属したレコード会社やプロダクションの力、さらに言えばその会社がどれぐらい力を入れてくれるかでかなり左右されてしまう。多分、本よりさらにCDの方が、宣伝力って大きいし。夢を抱いて、メジャーデビューにこぎつけて、あっという間に散っていった人を沢山見た。デビューできずに終った人も。で、いつも「この人たちは、どこで音楽をやめる決断を下すんだろう」ってことを考えてた。年齢なのか、契約切れなのか、メンバーの脱退なのか。売れなくてもメジャーでCDを出せれば“いい思い出”になるのか。逆に夢に手が届きかけた悔しさがつのるのか。売れるってこと=幸せではないと本心から思えるのか、ってなことを。この本を読んでいたらそんなことを思い出した>
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「家守」
(歌野晶午著 光文社\819)
今年「葉桜の季節に君を想うということ」が話題になった著者の「家」をモチーフにした最新連作集。家への執着ってほんと独特の怖さがあるからねぇと納得。ところで「葉桜〜」は、読後、今年一番「そんな!」と叫んだ本だった。未読の人はぜひに。
<築30年、30坪のどこにでもある家の主婦が、ある日寝室で死んでいるところを夫に発見された。玄関にはチェーンロックがかかり、窓には全て鍵がかけられていた。死因は窒息死。ナイトキャップがずれての事故と片付けられそうになったものの――というのが表題作の大筋。個人的にはこの作品より、その次に掲載されていた、フリーターの青年がぼけた爺さんの息子役をアルバイトで務める、という「埴生の宿」が好み。ま、でもとにかく今年は「葉桜」だ!>
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「Cartain」
(谷村志穂著 実業之日本社\1500)
ワイドショーに出ているのを見かけるたびに、やめればいいのに……と思わずにはいられないが、谷村志穂の書くものはわりと好きな私。本書は父や母が亡くなったり、離婚したりで誰かが欠けてしまった家族を描いた短篇集。ちょっと装丁が読者を選びそうな雰囲気でもったいない。
<本当に、“ジャスト”でおすぎと一緒に出ているのを見かけるたびに、何とも言えないジレンマに陥る。あそこで微笑んでいる谷村志穂を見て「この人の本を読んでみよう」と思う人はいるんだろうか。名前売れてもあまり意味がないような。いやでも、小説はほんとそんなに悪くない。イメージよりも。って私がテレビから受ける印象を下に見すぎなんだろうか。いやいや>
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「魔女の息子」
(伏見憲明著 河出書房新社\1200)
最終候補に残った3作が全て同時受賞となった第40回の文藝賞受賞作の1つ。著者の伏見憲明は著明なゲイ・ライターで、受賞を知ったとき「おお!」と衝撃を受けた。自伝的とされる本書は過剰な書き込みはないのに余熱が伝わる感じで良かった。
<今年の文藝賞は3作ともわりといい感じ、と聞いているのでほか2作も楽しみ。これはゲイものではあるけれど、大げさ感のなさが良い。ほか2作を読んでからお勧めマークにするかを判断しようかと>
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「名刀中条スパパパパン!!!」
(中条省平著 \2800)
1997年11月〜2003年5月まで「論座」に連載された文芸時評をまとめたもの。論座の連載なんて聞くと内心「うげー」と思うのだけれど、中条氏の文章はいつもすいすい頭に入って、本当に頭のいい人の文章だなという印象。面白い。でも高い。値段見ないで買ったので、ちょっとレジでビックリした。
<高いよなぁ、ほんと。いい本なんだけどなぁ。何が面白かったって、某芥川賞受賞作の強烈批判。あまりに正論で、読んでいて痛快すぎて笑いがこみ上げてきた。そうなんだよ、そのとおり!と膝うちっぱなし。でもこういう「論理」って、人が書いたり言ったりしているのを読むと「私もそう思う!」って簡単に言えるけど、自分が思ってることを同じように文章や言葉にできるかといえばそれは難しいわけです>
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「くつしたをかくせ!」
(乙一著 羽住都絵 光文社\1500)
乙一初絵本。もっとダーク要素があるのかと思いきや、捻りは1回転半ぐらいだった。スニーカー文庫のコンビだけど、羽住都の絵はいいなぁ。
<今日、見本が届いたのだけれど、本当に絵がカワイイ。私が高校生ぐらいの女子だったらクリスマスプレゼントにもらいたかった!>
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「ロマンス小説の七日間」(三浦しをん著 角川文庫\590)
三浦しをんの文庫書き下ろし。主人公はロマンス小説の翻訳者。中盤以降の加速と展開がお見事!
<主人公が翻訳しているのはいわゆる中世の騎士もの。しかしながら、そこはロマンス小説ウオッチャー三浦しをんの書く話。普通の展開では終わらない。この人は本当に、誰にも似てない才能を持っていると思う。凄いことなり。ロマンス嫌い(私もほとんど興味ない)の人は、とりあえず、それでも気合で中盤ぐらいまで読んでみて。面白さ加速するから!>
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「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」
(宮藤官九郎著 角川書店\1000)
公開中の映画のシナリオ本。出演者が口をそろえて「台本が面白い!」と言っているのをよく見かけたので、楽しみにしていたらやっぱり面白かった。でもややマンネリ感も。ニャー!
<これ、どこまで話してOKなんだろう。映画のネタバレ基準がわからない私(笑)。ええと、宮藤官九郎はやっぱりセリフが肝なんだな、ということが非常によくわかるかと。脚本ってたまに読むと小説との違いを考えさせられる>
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「スリムになるリンパマッサージ」
(渡辺佳子著 PHP\1300)
リンパマッサージに最近興味アリ。足とか確実にむくみがとれる。でも自分でやるんじゃなくて誰かにやって欲しい……。
<この手の本は当たり外れ激しいんだけど、これはわりとちゃんと役に立って気持ち良い。いくつかこういうリンパマッサージ系の本は持ってるけど、一番見やすくて解りやすいかも。初心者向けってことですが>
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「送り火」
(重松清著 文藝春秋\1619)
著者初の"アーバン・ホラー"ということだけど、ホラー色はそんなに強くない。むしろ重松清節の幹っていうか王道ライン。好みで言うと9編中、前半より後半の作品のほうがタイプ。
<すんごい働いてますなぁ。今年ものすごく沢山本が出たような気がする。まだ今月「愛妻日記」も出るらしいし。私的には今年はやっぱり「疾走」がインパクト強かったけど、「哀愁的東京」もこの「送り火」も“ふつう”より良かった。この人の小説は、何かチクッと残るんだけど、その残り方が変わってきてる気がする>
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「四季 夏」
(森博嗣著 講談社\800)
あわわわわわ。もう何も話せない!
<いやいやいややっぱり何も話せない! 話したいけど話せないっ!>
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「電子の星 池袋ウエストゲートパーク〈4〉」
(石田衣良著 文藝春秋\1524)
ゲラ読み。個人的ツボは3話目の「黒いフードの夜」。マコっちゃん、オトナになったなぁ。
<ラーメン戦争に、父と息子と孫の人情系、少年売春、ハードSM。私はその昔、南池袋に住んでいて、今も一番多く行く繁華街が池袋なので、この本にはやっぱり特別の懐かしさがある。いつ読んでも、ちゃんと、変わっていく街のにおいみたいなものを感じるのが凄い>
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「リセットダイエット」
(篠塚蘭美以著 幻冬舎\1300)
今回のダイエットバイブル。食事レシピが欲しかった!
<1週間で4.2キロ減、という私にしては驚異的な結果を残した炭水化物抜きダイエットのバイブル。実行中、何度読み返したことか! ¥1300で痩せるきっかけができれば安いものだと思われ>
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オススメ!「アヒルと鴨のコインロッカー」
(伊坂幸太郎著 東京創元社¥1500)
大学入学を機に仙台に引っ越してきた椎名。アパートの隣室に挨拶に行くと男は「カワサキ」と名乗った。その翌々日、河崎にひきずられ、モデルガンを持って書店を襲う見張りをさせられることに。なんでこんな展開に!? この河崎&椎名の現在の様子と、2年前の出来事が交互に綴られやがてあらゆる疑問が解けて今に繋がる、という仕組み。これいい! 「重力ピエロ」にあまり心惹かれなかった私としては、伊坂幸太郎はこうでなくっちゃ! という感じ。とにかくかっこいいんだ河崎。容姿端麗のスケコマシ。歩道にとめてある自転車をガンガン蹴り倒す場面。惚れた……!! 世の中の女子読みましょう。そして萌えましょう! あ、読む前にボブ・ディラン聴いておくこと。特に「風に吹かれて」。知らない人、思い出せない人は絶対聞きたくなるから!
<しかしこれ、説明するの難しい。いやどっちにしても、かっこいいんだ河崎。どっちにしてもね! 小説における男性キャラって、過剰にドリーム入ってるか、妙に時代がかってるかでなかなか等身大のいい男っていないもの。この作品はもう河崎だけで買いなのよ! でも話もいいのだ。私の今年のベスト3に入るかも。いや、もう某誌で入るって言っちゃったんだけど(笑)>
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「失はれる物語」
(乙一著 角川書店¥1300)
スニーカー文庫に収録されている5話「Calling You」「傷―KIZ/KIDS」(「きみにしか聞こえない」)、「失はれた物語」(改題)「手を握る泥棒の物語」(「さみしさの周波数」)、「しあわせは子猫のかたち」(「失踪HOLIDAY」)+書き下ろし「マリアの指」の全6話。文庫収録作を5つも集めて単行本にって、そりゃまた随分思い切ったことしますなぁ、と思ったんですよ、最初は。しかしこれね、驚いた。もの凄く丁寧に手が入っていて、印象が文庫で読んだときとかなり違うのだ。言葉って凄いな、乙一ってやっぱり凄いぞ、とちょい興奮。文庫持っている人はぜひ比べて読んでみて欲しい。あ、書き下ろしも切な怖くていい感じ。
<とはいいつつも、文庫持ってる人にはちょっとやっぱり割高感あるかも。でも未読の人には本当にお徳だと思われ>
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オススメ! 「姉飼」
(遠藤徹著 角川書店¥1200)
2年ごとにしか大賞受賞作の出ない日本ホラー小説大賞、今年度の受賞作。ホラー大賞には短編、長編部門があるのだけれど、これまで短編で大賞を受賞したのは岩井志麻子の「ぼっけえ、きょうてえ」だけ。で、本書が以来初の短編大賞作! ということで期待して読んだ。で、これが凄いんだけど、期待して読んだのに期待以上だったのだ! 本書には受賞作以外にも3話収録されているのだけれど、ちょっと言葉にし難い魅力、というか魔力がある。そもそもあなた「姉飼」ってタイトルだけでもやばいっしょ。で、買う&飼うのよ「姉」を。串に刺さってんのよ、姉。ギャー!ってなもんだわよ。違う人格のりうつっちゃうよ私も! 必読!
<先日、このホラー大賞の授賞式パーティに行って、挨拶を聞いてきた。著者の遠藤氏は東大卒なんだけど、頭のいい人特有の気配をひしひしと感じた。ファンだから云々というのではなく、森博嗣の気配に似てる。でも森博嗣読んだときには土屋賢二に似てるって思った私。それってつまり大学人の気配なんだろうか。いずれにしてもこれはホントに凄いっ!>
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オススメ!「負け犬の遠吠え」
(酒井順子 講談社¥1400)
さぁて出ましたっ!今年度、フジタのエッセイ部門NO1作品!! もう本を読んでこんなに大声出して笑ったのは久しぶりだ。鋭く、容赦なく、世の中に急増中の高齢独身女性の本音を明かしまくり。ほらそこの歌舞伎や着物やフラメンコにはまりかけてる独身女子! アリーやセックス・アンド・ザ・シティ好きな女子! もうこれ、やばいほど腹痛いですよ。30歳以上で独身である女性のみなさーん! 買いましょう! 読みましょう! 笑いましょう! そして自分を知りましょう。「女性誌というのは、読みすぎるとバカになりますが、読まなさすぎるとブスになるのです」など名言多し。もう腰抜けるっちゅーねんマジで。あ、男子禁制でひとつお願いします。
<エッセイって、結局のところはその著者が好き嫌いか、興味がるかないかが勝負だったりする部分がある。タレントエッセイを思い浮かべれば解りやすいのだけれど、普通の人が書いたんだったら全くもって面白くないようなことでも、「その人」の日常だから読まれたりするわけで。で、酒井順子。私は正直、まったく彼女自身には興味はない。好きとか嫌いとか判断できるほど知らないし。でも彼女の書くものは好きなのだ。これってよく考えるとほんと凄い。小説を書かず、他の同業者とつるむこともなく、テレビに出るわけでもなく、エッセイのみを書きつづけてもうすぐ20年! 尊敬>
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オススメ!「あかん」
(山本甲士著 小学館文庫¥638)
今年度私的超ブレイク作家山本甲士。「かび」でクラクラきて「どろ」を読んだらもうその暴走っぷりにメロメロになった。こちらは文庫書き下ろしで、ヤクザにはなりきれない、でもまともにも生きられない「あかん」男たちがその腹の据わらない状況ゆえに、ますますいかんともし難い状況に追い込まれ「あかん……」と呟くハメになる連作集。「かび」や「どろ」のような壊れっぷりはないものの、落しどころが上手い。舞台が関西ってことに好き嫌いはあるかもしれないけど、嫌いじゃないという人は一度ぜひお試しを。
<「かび」や「どろ」は戸梶圭太テイスティだったのだけれど、これは中場利一入ってる感じ。巧くまとめすぎてる気がしないでもないけど、でもこういうのも書けるのね、ということが解っただけでも私的には大収穫。主人公たちはみんな憎めないバカだけど、実際に自分の近くにいたら迷惑だろうなぁ>
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「レオナルドのユダ」
(服部まゆみ 角川書店¥2100)
天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの半生を、彼を取り巻く人々の目線で描いた意欲作。っていうか、ダヴィンチのことなんて、私はほとんど何も知らないわけですがこれ、凄いと思う。何って、見たこともない絵が、目の前に浮かぶんですよ! 凄い描写力だ。細かいんじゃなくて、その空気を伝えるのが上手いのかと。ダヴィンチの周囲の人たちも、こんな風に例えるのはどうかと思うが、まるで少女漫画のよう。もうねぇ、ミステリー云々ではなく、ちょっとビックリ。服部まゆみってこんな文章描くっけ!? という驚きの連続。
<これ、美術系好きな人が読んだらどう思うんだろう。美術興味ゼロ、美的センス皆無の私的には面白かったんだけど。服部まゆみなので、そこはちゃんとミステリ仕立てにもなっていて、でもそんなことはどうでもいいっていうか、枝葉なことに思えてしまうのが良いのか悪いのかちょっと気になる>
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「“せんべろ”探偵が行く」
(中島らも・小堀純著 文藝春秋¥1381)
帯に「世間をお騒がせしましたが、ほんとうは大麻よりお酒のほうが好きなんです」とあって笑った。いやお酒好きなのはみんな知っているんじゃ……? と。 で、これは「1000円でべろべろになるまで呑める店」を求めて大阪、東京、神戸に広島、金沢、博多などなどをうろつくエッセイ集。1合200円少々の日本酒はともかく、はまちの刺身190円、ふぐの唐揚げ350円てなつまみの値段に驚愕。そのはまちは本当にはまちなんだろうか……。そんな疑念を抱きつつ読むのもまた楽しくもあり。
<1000円でベロベロになれるってんだから、基本は立ち飲み屋だったりするのだけれど、それにしたって安すぎる。でも、どんなにつまみや安い店でも、酒はそれなりに高い。これを読んでると酒って罪だなぁとも思ったり。こういう本を読むと、あぁ男に生まれたかった! と思う。いや立ち飲み屋、行ったことあるんだけど、私はいいけどそこの店にいるおっちゃんたちがやっぱり女がいると何かこう、嫌というか、聖域汚されたような気になるんじゃないかと思って>
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オススメ!「美人画報ワンダー」
(安野モヨコ著 講談社¥1400)
人気の美人画法シリーズいよいよ最終巻。最終巻は「綺麗になりたい!とにかく痩せたいっ!」という魂の叫びのような猛烈モードから脱して、テンションが落ち着いた感じで普通に楽しい。執念の美容本というのではなく、「コスメとか洋服とか大好き!」という正しい女子なスタンスが人気の原因なんだと思う。そしてですね、これ重要なんだけど、安野モヨコの文章はとても読みやすくて上手いのだ。読者をのせていくリズムがあるし。これは練習してどうなるものでもなく、感覚、才能だなーと思う。
<正直、私は全く安野モヨコとは趣味が合わないというか、あのパワーが理解できないというか、洋服なんてどうでもいいし、ネイルや香水に興味は欠片もないし、モテたい欲もないし、自分に対する「こうあるべき」ってものもない。でも、そんなにあらゆるものが欠落した私が読んでも面白いってところが凄い。あとほんと綺麗になったよねー。そこがやっぱり素直に単純に凄いな、と思うですよ>
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「マイ・ハウス」
(小倉銀時著 産業編集センター¥1500)
夫は失業中、息子は不登校で部屋の閉じこもり、娘は月に数万の通話料を払う携帯依存気味。団地住まいの和代はそんな生活にほとほと嫌気がさしていた。そこに加えて飼っていた犬を新顔の転入者に「ルール違反だ」と指摘され、こんな生活もういやや!とブチ切れ、競売で家を買い引っ越すことを計画、実行。しかし和代が手に入れた家には、手強い女が居座っていた――という第13回自由都市文学賞受賞作をもとにした長編。競売云々については特に目新しさはないものの、女の、しかもおばちゃんの戦いっぷりは凄い。さらにもっとえげつない話、書いて欲しい。
<こういう本を読むにつけ、ナニワのおばちゃんパワーって、関東人には理解しきれないものがある気がする。ラスト近くの先住者の描写は、「黒い家」の幸子も顔負け。怖すぎる!競売ネタといえば宮部みゆきの「理由」や篠田節子の「女たちのジハード」を思い出す人もいるかもしれないが、その2作の直木賞受賞作より執念強し! それより、気になったのは文字間と行間が妙にすかすかなこと。速読なんてできない私。でも見開き1分ぐらいで読めた。なぜゆえに? どんな狙いが?>
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オススメ!「誰か Somebody」
(宮部みゆき著 実業之日本社¥1524)
8月、お盆の最中一人の男が自転車に撥ねられ死んだ。男は財閥会長の運転手・梶田だった。その会長直属の広報室で働く杉村三郎は、義父でもある会長の命を受け、死んだ梶田の娘二人の話を聞く。父の生涯を本にしたい――妹の梨子はそう言った。だが妹より10歳年上の姉・聡美は父の過去に後ろ暗いことがあるのでは、と案じ反対だった。彼女たちの話を聞き、梶田の過去を調べる手伝いをかって出た三郎。そこで明らかになったのは――という話。はっきり言って道具立ては地味極まりない。死んだのは「自転車」事故が原因だし、男は初老の運転手だし、姉妹の確執も大した話じゃないし。にもかかわらず、巧い。そんな身近などこにでもあるエピソードを集めて、こうもってくるか! という感じ。
<これねー、ほんと地味な話なんだ。華ってものも、惹きってものも何にもない。奇抜なトリックとか萌えまくりのキャラクターとか、感動をありがとうとか、涙が止まりませんでしたとか、そんなものがなくても「いい」小説って書けるんだ! ということがよく解る。いやでもこんなものが書けるのは、やっぱり宮部みゆきだからでしょう。凄いです>
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「影踏み」
(横山秀夫著 祥伝社¥1700)
かつて一流大学法学部に通い、司法試験を目指していた真壁修一。しかし現在はノビ師(夜盗・空巣)として生きている。15年前、母親が空巣を繰り返していた双子の弟・啓ニを道連れに自宅に火を放ち、無理心中したことが真壁の人生を大きく変えたのだった。物語は住居侵入罪での服役を終え出所した34歳の真壁が、弟・啓ニの“声”を聞きながら過す1年を2ヶ月ごとに追っていく。真壁、34歳って私より年下なんだけど、すごい大人。ビックリ。
<相変わらず隙のない巧さで、ラストまで惹きつけられるのだけれど、いかんせん真壁34歳。それがどうも信じられん(笑)。いやでも、横山秀夫が男性読者に人気があるのはすごく良くわかる。硬質で硬派。それでいて少しおセンチモードが入るのだ。男の哀愁的な。ニクイねぇ>
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