だらしな書店




オススメ!「希望」
(永井するみ著 文藝春秋\2400)
東京と千葉で、老女3人が連続して殺される事件が発生。死体には「大変よくできました」というハンコが押されていた。やがて捕まった犯人は14歳の中学生だった。当然、顔写真や氏名は公表されなかったがネットで流出。その整った顔立ちと「計画を立てきちんと実行するプロセスを楽しみたかった」「狙いやすい子供ではなく年寄りをターゲットにしたのは、その人の生命価値を数値化したら明らかにお年寄りより子供のほうが高くなるから」といった理知的とも思える言葉が人気を呼び、犯人の少年にはファンクラブまで出来た。それから5年。少年院を出てきた少年は、もう「少年」ではなく、美しい青年に成長していた。その息子をもてあます母親、カウンセラーと旧知の雑誌記者、被害者の孫たち、当時の事件を担当した刑事などを巻き込んで、新たな事件の幕が開く__いろいろ思うことはあるけれど、大筋では凄く面白いっ! 東野圭吾の「手紙」+真保裕一「繋がれた明日」+乃南アサ「風紋」「晩鐘」の4冊を3で割った感じ。これがせめて1800円ぐらいで売れるといいのになぁと思う。でも文句なしの、今回のお奨めNO1!
<これはほんとに読み応えもあるし、少年も非常に萌える感じだし(笑)、刑事は刑事でいいし、孫の一人もなかなか好みだしで、いい男好きとしてはうれしい限りだった。永井するみは前作(多分)の「唇のあとに続くすべてのこと」(光文社)が、きそうな予感を漂わせつつも消化不良、という感じだったので、よくぞここまで書ききった!という印象。でもラストのエピソードはなぁ。余計では? と私は思ったけど、果たしてどうでしょう。みなさん。ボリュームあるし、読んだ感もあるので、年末年始本にもお奨め。>
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「まっすぐに蹴る」
(佐竹雅昭著 角川書店\1400)
正道会館からK1、リングス、P RIDE と格闘技最前線を歩いてきた著者が「今だから話せる」すべてを明かす。私はまったく、かけらも、格闘技に興味がないので、この人の言っていることをどこまで信じていいのかわからないけど、どうもなんかこうモヤるなぁ。政治家になりたいらしい。しかも「タレント議員とかそういういい加減なものではなくて、社会に武道をなじませ、世を正すという意味での政治参加」だそう。とか言いつつ、あっという間に参議院選とか出てきたら驚くわー。最後に収録されている編集さんとの対談(形式)が一番面白かった。
<ぶっちゃけ(死語)こんな本出していいのかと心配になるほど自分勝手な言い訳本のように感じてしまった。まぁでもこれぐらいのことを言わないとインパクトはないのかもしれないけど。それにしても政治家宣言。凄いわー。でもどう考えてもこの人に今の段階では「タレント議員」以外の可能性なんてあるようには思えないんだけど……。>
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「世界のしくみ」
(細川徹、五月女ケイ子著 扶桑社\1200)
「新しい単位」の著者の書き下ろし共著。近未来の笑点「サテライト大喜利で世界に笑いを!!」「こうだといいな。この木、何の木、気になる木」「武蔵の二刀流に対して小次郎の考えたボツ作戦」「バカワールドカップ」「欽ちゃんのよいテポドン・わるいテポドン・ふつうのテポドン」など、素敵にくだらなく、どこまでもおバカに「世界のしくみ」を図解。ゲラ読み。17日発売予定。
<ゲラは全ページ分なかったので、本になったら私も買う予定。でもちょっと「すげー面白い」か「ちょっと肩すかし」のボーダーにある気もするので、要立ち読みかも。>
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「食べてキレイ」
(園山真希絵著 アートン\1500)
65キログラムから40キログラムへ! 食べることがとにかく大好きで、ダイエットをしても結局食べてしまい自己嫌悪に陥っていた著者が、「食べて痩せよう!」と発想を転換。「デブでブス」だったのに、モデルにスカウトされる日が来るなんて! デブ時代と痩せるまでのエッセイ+389のダイエットレシピがついているんだけど、このレシピが凄い充実&お役立ち。簡潔だし、美味しそうだしで、物凄いそそられる。外食アドバイスもあるし。今年私はかなりのダイエット本を読んだんだけど、これはほんとよく出来てると思う。正直、私はタレント(っていうかモデル?)としての著者を知らないのだけれど、タレント本の粋を超えてると思う。
<正直、エッセイ部分はまぁ、そんなに凄くためになるとか目新しいことが書いてあるわけではないのだけれど、このレシピ部分は本当にためになると思う。内容としては凄くお得感あり。>
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「潤一」
(井上荒野著 マガジンハウス\1400)
江國香織と一緒に第一回フェミナ賞を受賞して以来「もう切るわ」「ヌルコイ」などいい作品を書きつつも今一歩ブレイクしきれない感のある井上荒野。別に売れればいいってもんじゃないけど、でもこの人はも少し知られてもいいと思う。本書は「潤一」という一人の青年が、下は14歳から上は62歳まで9人の女たちと出会い、言葉を交わし、手を繋ぎ、時には身体を重ね、去っていくまでを描いた連作集。最初のうちは「うわー嫌な男!」と思っていた潤一の浮ついたふわふわ漂うような感じが、だんだんと心地よくなっていくのが不思議。この「毒を抜かれる」感じ、よくわかるなぁ。
<こういうことを書くたびに「オレって何様?」と思うんだけど、井上荒野は本当に、なんていうかタイミングに恵まれないというか「可能性ある」といわれ続けて早10年ていうか。これもちょっと要約するとなんか「えー」な話っぽく捉えられそうでちょっと心配。ま、一度図書館で読んでみて判断されたし。>
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オススメ!「後巷説百物語」
(京極夏彦著 角川書店\2000)
「巷説百物語」「巷説百物語 続」に続く題3弾。実はワタクシ、いわゆる京極堂シリーズはあまり得意じゃないのだけれど、このシリーズは好き。時は前2作の江戸から明治へ。警視庁一等巡査の矢作剣之進は、仲間たちととある怪奇話の真偽をめぐり言い争いになり、薬研堀の隠居と呼ばれる80歳を過ぎた老人を訪ねる。奇妙な体験談を多く持つ、この老人こそが実は__という仕掛けなのだけれど、さすがに上手いねぇ。この最終話はほんとにため息ですわー。
<京極夏彦も、森博嗣同様、正直好きな人は凄く好きだけど、なかなか今から手を出しにくい部分があると思うんですわー。もうどこから読んだらいいのかわからないというか、今更読んでもコアなファンの人たちとはすんごい距離ひらいちゃっててちょっとムナシーっていうか。そんな人の入門にも、この「巷説百物語」シリーズは良いんじゃないかな、と。妖怪妖怪してないし。>
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「藍色のベンチャー」(上巻 / 下巻
(幸田真音著 新潮社各\1600)
債権ディーラーなどの職歴を生かし、いわゆる金融・経済小説を書いてきた幸田真音。それなりに読んできてはいたものの「投資アドバイザー有利子」を読んだときに、正直あぁこの人は「オジ系作家なのね」と判断していた。だって投資アドバイザーの主人公の名前が有利子だよ。利子が有ると書いてアリコ。このセンスににやりとできる人が読む小説なのね、と。しかーし、本書は著者にとっても初挑戦の時代小説。幕末。彦根の大店呉服古着商メ絹屋モの主人が、京で流行始めたやきものに魅せられ、自ら窯を起こす奮闘記で、なかなか面白かった。ま、いろいろと思うところはあるけれど、少なくともオジ小説ではないので御安心を。
<ぶっちゃけ(だからほんとにもうやめれ)仕事読みだったわけですよ。某週刊新潮の書評ページで依頼があって、それから読んだという。つまり、自分の好みではまずもう読んでなかったと思われ。でも、この本に関しては読んで損した!ということはなかった。とりあえず、また金融系ではない本が出たら読んでみようかな、とも思ったし。>
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オススメ!「できるかなV3」
(西原理恵子著 扶桑社\952)
いきなり「脱税できるかな」だよ。えらいことだよ大変だよ! 税務署相手に一歩も引かず、だってお金ないんだもん、ごめんなさい、でもうちこうなんです、と押しまくる。すげー。マジすげー。で、で、で、ですよ、1億円だった追徴課税がな、な、な、なんと__円に!キャー! 税金って、まかるもんなんですなぁ。さらに「ホステスできるかな」では、北方先生に乳を揉ませ、大沢先生に頬ずり、一同で女体盛りをつまむ......。すげー。マジすげー。これで千円。安い安すぎる!
<私は西原理恵子が好きだ。でもあまりに好きすぎて、彼女のあらゆる仕事を読み込みすぎて、自分が聞きたいことなどもう何もなく、1度インタビューさせてもらったときは、ものすごいつまらないことしか聞けなかった。山本文緒にしても、森博嗣にしても、好きな作家には好きすぎて聞けないことが多く、インタビューアーとしてまったくなってないな、といつも思う。西原理恵子の楽しみ方は、やっぱり仕事なんかじゃなくて、無責任に読んでげらげら笑い、ちょっとうっ……と胸を熱くするのが贅沢だ。お正月休みにこたつでゴロゴロ読むには最適かと。>
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オススメ! 「黒冷水」
(羽田圭介著 河出書房新社\1300)
今年3作同時受賞となったの文藝賞受賞作その2。著者は17歳の現役高校生ということで、ま、正直、話題作り的要素もあるかなぁと思っていたわけですよ。もちろん、それが悪いってことじゃなく、売れるものは売りましょうというのは新人賞のあり方として間違ってないと思うし。でもいやしかし。上手いじゃないですかー! 高校生の兄の部屋をあさり続ける中学生の弟と、その弟の行為を見抜き愚鈍な弟を小馬鹿にしている兄。二人の憎悪が行き着く先は__という話なのだけれど、いやいやこの兄ちゃん、私は結構好きなんだけど、すんごい卑劣といえば卑劣で、意見がわかれそう。ラスト近くの展開もこれまた賛否両論ありそう。でも、いずれにしても読んで損なし。いやこの「どう思う?」って話をする価値がある、というだけで凄い。ほんとに。
<何かのインタビューで、綿矢りさが17歳で文藝賞を取ったのを知り、自分も書かなくちゃ!と思った、と読んだけど、その綿矢りさと同じ年できっちり受賞してしまうだけでもう、ただものではない感じ。これを読むとリアルな鬼ごっこしてる人とかは焦ったりしないんだろうか、と余計なお世話をやきたくなる。私だったら同世代の年下で、同系統で、こんな作家が出てきたらたまらなく焦ると思う。荒さもあるけど、文藝賞以外の今年の新人賞系の全ての受賞作の中でもベスト5に入るんじゃないだろうか。個人的にはベスト3に入るかも。>
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オススメ!「号泣する準備はできていた」
(江國香織著 新潮社\1400)
あるゾーンの人たちには物凄い直球ストライクだと思うこのタイトル。でもそのゾーンは打ちたくない、という人にとっても、これはなかなか楽しめる短編集だと思う。もうやってらんない、と思わず呟いた昨日、泣きたくなるけど泣いてなんかいられない今日。それでもやってくる明日。個人的には表題作より「じゃこじゃこのビスケット」「溝」「どこでもない場所」「そこなう」あたりが好み。人気作家なので逆になかなか手を出しにくい、という人にもお薦め。
<江國香織も上の京極夏彦的、手の出し難さがあると思うんだけど、これはなかなか入門編としてもいい感じ。このタイトルをあざといなぁと思うか上手いなぁと思うかでまず分かれそうだけど、「あざとい」派の人も、中はそうでもないので御安心を。>
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「オアシス」
(生田紗代著 河出書房新社\1200)
文藝賞3冊目。ある意味一番王道の文藝賞らしい作品。母親とOLの姉の3人で暮らす21歳フリーターの主人公・芽衣子。46歳の母は、一切の家事を放棄し、食事も掃除も洗濯も姉と芽衣子が行っていた。働いて稼ぐでもなし、家事をするでもなし、完全パラサイト状態の母をもてあます娘たち。この先どっちが母親の面倒を見るのか。いや、こんな母親がいて嫁になど行けるのか。単身赴任中の父親はいったいどう思っているのか。しかし気重な生活は、意外な方向へ__。ちょっとこの切り口は新鮮だったなぁ。「黒冷水」系の怖い話はキライ、という人はこちらをどうぞ。
<オススメマークをつけようか悩んだ末、今回は保留したんだけど、いわゆるライト純文好きな人にはお奨め。しっかし、実際こういう母親増えていくんだろうなぁ。他人との関係性以前に、家族との関係も凄く難しくなってるわけで、それは虐待とか家庭内暴力とかそういうハードな話ではなく「暴れるほどじゃないけどどうもしっくりいかない感」みたいなものを親や子に感じる人は増えていく一方な気が。>
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